装甲艇

装甲艇について

装甲艇(AB艇)は大發・小發の揚陸を掩護する目的をもって建造されました。第1号艇は昭和3326日宇品で進水し「さきがけ」と命名されました。次いで昭和5年に第2号艇である「勝鬨」が建造され、その研究試験に基づき昭和7年に第3号艇が建造されました。昭和83月に山口県仙崎町付近の海岸で第3号艇を用いて行われた研究試験の結果を受け小改良を加えた上で量産化されることになりました。この研究試験の詳細はJACAR: C01004003200でご覧になれます。昭和205月現在の区分は「戦闘用舟艇」で主体類別は「一類」、取扱区分は「普通」でした。

装甲艇の諸元

()

()

深さ

()

自重

(トン)

満載

排水量

速力

()

航続力

(時間)

乗員

()

さきがけ

14.40

3.00

1.62

?

16

11.5

10

10

勝鬨

20

?

?

20

?

?

?

?

第三號艇

15.50

3.50

1.65

?

17.5

27.8

?

11-13

426號艇

15.50

3.50

1.65

?

17.5

11.5

10

13

2735號艇

17.50

3.50

1.65

?

20

14

10

13-18

昭和13年製造艇

16.50

3.50

1.65

?

20

14

10

13-15

昭和14年製造艇

16.50

3.50

1.65

?

16.5

14

10

13-15

ST艇(試作艇)

11.00

2.00

1.10

9.65

昭和15年製造艇

?

?

?

?

?

?

?

?

(昭和造船史)

17.10

3.50

1.65

16.5

18

14

10

?

 

 

 

37

狙撃砲

9057

戦車砲

89式旋回機銃

38式機関銃

発煙装置

機関

(種類)

機関

()

出力

(馬力)

さきがけ

1

0

0

2

1

Gasoline

1

150

勝鬨

0

1

2

0

?

Diesel

?

?

第三號艇

0

1

2

0

1

Diesel

1

350

昭和7年製造艇

0

1

2*a

0

1

Diesel

1

350

昭和12年製造艇

0

1

2

0

1

Diesel

1

350

昭和13年製造艇

0

2

2

0

1

Diesel

1

350

昭和14年製造艇

0

2

1

0

1

Diesel

1

350

ST艇(試作艇)

Diesel

1

150

昭和15年製造艇

0

?

?

0

?

?

?

?

 

隻数

製造所

船番

備考

さきがけ

1

宇品

勝鬨

1

第三號艇

1

昭和7年製造艇

23

昭和12年製造艇

10

昭和13年製造艇

11

株式會社大阪鐵工所本社工場

昭和14年製造艇

19

株式會社大阪鐵工所本社工場

ST艇(試作艇)

1

三菱重工業株式會社横浜造船所

327

昭和15年以降製造艇

ST

(8)

三菱重工業株式會社横浜造船所

418-425

建造中止

(昭和19年)

9+(3)

三菱重工業株式會社横浜造船所

582-593

*b

 

)

*: 上表は出典2を基本に若干の修正を加えたもの。出典2において第三號艇は全長15.5m、最大幅3.5mとされているがこれは明らかに誤りで、長・幅・深さは垂線間におけるもの。因みに第三號艇の全長は16.000m、全幅4.00m、最大深さ3.90m、平均吃水1m、主機は新潟T6Y型。第三號艇の諸元から類推し他のタイプも、長・幅・深さについてどこの部分の数値なのか再検討を要する。参考に「昭和造船史」記載の数値も挙げておく。

*a: 三年式重機関銃への交換可能

*b: 584番船〜第590番船は神奈川造船で建造。第591番船〜第593番船は建造中止。

 

出典:

1.     「昭和造船史第1巻」(原書房) 日本造船学会編(P.765)

2.     「『陸軍船舶隊』の知られざる記録」藤田昌雄 (雑誌「丸」20084月号(潮書房)所載)

3.     「日立造船株式會社七十五年史」 日立造船株式会社

4.     「陸密第3296号:海運器材の名称、区分、類別並機(秘)密取扱区分等に関する件陸軍一般へ通牒」(JACAR: C01007870400

5.     「運普第1750号:船舶輸送用補助物件(装甲艇)試験に関する件」(JACAR: C01004003200)

6.     「運普第1589号:昭和七年度研究審査現況報告書送付の件」(JACAR: C01004003300)

7.     「快速装甲艇新造に関する件」(JACAR:C01006190500